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思春浪漫堂周辺紀行(4)〜松濤・大山稲荷神社
2006年03月03日

060303.jpg

町中で稲荷神社に気づくと一礼する習慣を持っている。宗教的というよりかなり情緒的なものだ。それは亡き息子の思い出につながる。他界後のことである。息子が毎朝登校路にあったお稲荷さんに、必ず手を合わせて学校に向かっていたことを知った。宮司から聞かされたのだ。その時私は思った。11才8カ月で逝った息子は、朝の短い祈りの中で病の本復を祈ったのだろうか。それとも私の知らない夢について何かを願ったのか。以来私は何処の稲荷神社であっても手を合わせるようになった。あの朝の祈りの力で、わが子は天命から逃げずに逝けたのだ、と信じるために。
さて、いま私のお気に入りの散歩道のひとつに、BUNKAMURA脇を観世能楽堂に向かう坂道がある。建ち並ぶ豪邸を鑑賞しながら、能楽堂の松の木の全容をとらえるころ、私の息は華やかに弾んでくる。ちょうどそのあたりに大山稲荷神社の社がある。小さくて目立たないが、鳥居に寛政6年(1794年)と記されているから二百年以上の歴史を持っていることになる。大山という呼称は、ここがかつて森だったことを示しているのだろう。途中ひと休みするにはピッタリの場所だ。そんな都会の奇蹟的な空間に紛れて、今日も私はお稲荷さんに一礼する。別に何かを願うというのでもなく。

〔お〕




投稿者: AR 日時: 16:49


 
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